第1回では「燃えるゴミの行方」を追いかけ、第2回では「最終処分場のリアル」を覗いてきたわけです。で、シリーズ最終回となる今回は、いよいよ視野を広げて「世界のごみ処理事情」を見にいくことにしました。
日本のごみ処理って、基本は「焼却」が主役なんですよね。一方で海外に目を向けると、これがまた驚くほど違う。広い土地をフル活用して「埋立て中心」の国もあれば、徹底的に分別してリサイクルに回す国もあるし、燃やした熱を街の暖房に流し込む国まである。同じ「ゴミを処理する」というゴールに対して、こんなにアプローチが違うのかと、調べていて素直に面白かったんですよね。
国の数だけ事情があって、国の数だけ正解がある。今回はその個性を、ちょっとした世界旅行気分で覗いてみることにします。
アメリカ:土地は広いから埋立上等!
アメリカといえば、まず思い浮かぶのが圧倒的な国土の広さ。そのスケールを背景に、ごみ処理は今でも「埋立て」が中心と言われています。大きな穴を掘って、そこにゴミを積み上げ、土をかぶせる――シンプルといえばシンプルなやり方なんですよね。
コストが安いのは大きな利点。ただし、長期的には地味にやっかいな副作用もある。埋め立てたゴミからはメタンや二酸化炭素が出ると言われていて、これは温室効果ガスとして無視できない量。さらに広大な土地を食い続けるという問題もあって、「広いから大丈夫」も永遠ではないわけです。
ただ、面白いのはここから先。広い埋立地を逆手に取って、表面に太陽光パネルを敷き詰めて発電所に転用する取り組みが各地で進んでいるそうで、これがちょっと未来っぽい。ゴミ山が静かに発電所に化けていくって、なんだか映画のオープニングみたいな絵じゃないですか(笑)。
ドイツ:分別の鬼!リサイクル大国
お次はドイツ。リサイクル大国としてよく名前が挙がる国で、家庭での分別ルールがとにかく細かいことで知られています。紙、プラスチック、ガラス(しかも色別)、金属、生ごみ……と、色分けされたコンテナにきっちり仕分けるのが日常なんだとか。観光で行っただけでも、街角に並ぶカラフルなコンテナの数に驚かされるそうです。
家庭ごみのリサイクル率は世界でもトップクラスとされていて、諸説あるものの、6割を超えるという数字を見かけることも多いんですよね。日本人の感覚からすると「ちょっと厳しすぎでは……」と腰が引けるレベルですが、ドイツの人にとってはそれが日常の景色。生まれたときからそうなので、面倒という発想自体があまりないらしいんです。
ここから引き出せる学びがあるとすれば、結局リサイクルって「設備」より「習慣」の勝負なのかもしれない、ということ。仕組みだけ整えても続かないし、文化として根付けばその仕組みが当たり前に回り始める。そう考えると、日本の分別文化もちゃんと胸を張れる位置にいるんですよね。
北欧:ごみ=街を温めるエネルギー源
舞台を北に移すと、スウェーデンやデンマークといった北欧勢が登場します。ここでの主役は「廃棄物発電」と「地域暖房」。ざっくり言うと、ごみを燃やして発生した熱でお湯を作り、そのお湯を街中に張り巡らされた配管に流して、各家庭の暖房や給湯に使う仕組みです。冬が長く厳しい地域だからこそ発達した、合理的な使い方なんですよね。
スウェーデンに至っては、自国のごみだけでは焼却炉の燃料が足りなくなり、近隣国からごみを輸入しているとも言われています。「ゴミ=燃料」と割り切ってしまえば、こういう逆転現象も起きうるわけで、なかなか面白い視点です。
これ、日本に置き換えるとどうでしょう。「銭湯のお湯、実は近所の清掃工場の熱で温めてます」って張り紙があったら、ちょっとほっこりするし、エコを肌で感じられそうじゃないですか。実際、日本の清掃工場でも余熱を温水プールや福祉施設に回している例はあるので、案外身近にある仕組みだったりもします。
シンガポール:土地が狭いから海に埋め立て!
国土の狭さでいうとシンガポールも相当なもの。だからこそ、ごみ処理の発想がかなりユニークです。基本はまず焼却して大幅に減容し、その焼却灰を「セマカウ埋立地」と呼ばれる人工島に持っていって埋めていく――というスタイルなんですよね。
このセマカウ、ただのゴミ島ではないところが見どころ。マングローブが残され、サンゴ礁や鳥たちの保護区にもなっていて、見学ツアーまであるらしいんです。「ごみを埋める島が観光地」って、字面だけ見ると違和感マシマシなんですが、写真を見ると本当に普通の南国の島なんですよね(笑)。狭い国土をどう使い倒すかという発想の延長線に、こういう答えがあるのかと感心させられます。
発展途上国の現状:まだまだ課題も
一方で、世界に目を向ければ、ごみ処理のインフラがまだ十分でない地域も少なくありません。野焼きや不法投棄、河川への流出といった問題は、健康被害や海洋プラスチックといった形で表面化していて、地球全体の課題として語られることが増えてきました。
こうして世界を眺めたあとに日本のごみ収集車を見ると、「決まった曜日に、決まった場所に出せば、ちゃんと持っていってくれる」――この当たり前のすごさを、改めて噛みしめてしまうわけです。
誤解しがちな「海外の方が進んでる?」問題
ここまで見てきて、ひとつ整理しておきたい思い込みがあります。
- 「海外は日本より進んでる」→一部の国は確かに先を行く部分があるけれど、全体で見ると日本の高温焼却+発電というハイブリッド型はかなり高水準と評価されている。
- 「日本の分別は面倒なだけ」→ドイツや北欧の細かさを知ると、日本のルールはむしろシンプルな方だったりする(笑)。
- 「日本は遅れている」→ダイオキシン対策や排ガス処理など、焼却技術の精度では世界トップクラスとも言われている。
「海外=先進、日本=遅れている」みたいな単純な構図ではなくて、それぞれの国土・気候・文化に合わせた最適解を選んでいる、というのが実態に近いんですよね。
ストーリー:ゴミ袋、第三章「世界編」
シリーズ恒例、ゴミ袋君の旅もついに世界編。アメリカでは広大な大地の一部としてゆっくり眠り、ドイツではコンテナごとに切り刻まれて生まれ変わり、北欧では炎の中で街を温めるヒーローに変身。そしてシンガポールでは海の上で島の一部となり、いつか観光客に踏まれる日を待つ……。
たった一枚のゴミ袋にも、行き先によって全然違う物語が用意されている。地味だけど、ちょっとグローバルな存在だと思いませんか(笑)。
まとめ:ゴミは世界共通の課題
3か国+αを駆け足で巡ってきて、改めて感じるのは「処理方法は国ごとに違っても、ゴールはみんな同じ」だということ。つまり、どうやってゴミを減らし、どうやって資源として回し直すか。ここに尽きるわけです。
裏を返せば、私たちが日常でできることもシンプルにまとまります。ゴミをそもそも減らす、使えるものは再利用する、出すときはルール通り分別する――この3つは、東京でもベルリンでもストックホルムでも、まったく同じように効くんですよね。
シリーズを通して取材してみて、正直、最初は「ちょっとした雑学になればいいか」くらいの軽い気持ちでした。でも書き終えてみると、ゴミ袋を玄関先に置く朝の一瞬が、なんだか少しだけ意味のある時間に感じられるようになった。これ、小市民にとっては結構な進歩だと思うんです。
というわけで「燃えるゴミシリーズ」、全3回でひとまず完結。お付き合いいただいたみなさん、ありがとうございました。次はまた別の角度から、日常のすぐ隣にある小さな謎を掘り起こしていく予定なので、引き続きのんびり覗きにきてもらえると嬉しいです。


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