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第2回:無音なのに怖い?──宇宙の静寂が人間に与える違和感

宇宙・ミステリー

前回は、
「宇宙は無音なのに、地球は“音”を発しているように感じられる」
という話をしたんですよね。

今回は少し角度を変えてみたいと思います。

そもそも、なぜ人は「宇宙の無音」を怖いと感じるのか?

これ、科学というよりも、
かなり人間側の問題なんですよね。


完全な無音は、人間にとって異常状態

考えてみると、生まれた瞬間から、
音のある世界で生きてるわけです。

心臓の鼓動。
自分の呼吸音。
風の通り抜ける音。
冷蔵庫のうなりや、外を走る車の遠い音。

完全な無音を体験したことがある人は、ほぼいない。

これ、当たり前のようでけっこう異常な事実だったりします。

実際、音を極限まで消した「無響室」と呼ばれる施設に入った人の多くは、
数分で不安やめまいを感じてしまうとされています。

米国ミネアポリスにあるオーフィールド研究所の無響室は、
「世界で一番静かな部屋」として有名で、
最長でも45分ほどしか滞在できなかった、という話も伝わっているんですよね(諸説あります)。

なぜそんなことになるのか。

理由はわりとシンプルで、
人間の脳は、
常に環境音を使って「自分が生きているか」を確認していると言われているから。

外からの音がゼロになると、
今度は自分の心臓の音、血液が流れる音、関節の音まで聞こえはじめる(マジで?)。

そのとき脳はこう誤解するわけです。

「外の情報が一切来ない。
……え? これ、危険な状況じゃない?」と。

要するに無音とは、
脳にとっては「世界が消えた状態」に近いんですよね。


宇宙の無音は「死の環境」に近い

宇宙空間というのは、

・空気がない
・音がない
・温度の緩衝もない

つまり、

人間が生きられない条件が全部そろっている場所なんですよね。

無音そのものが危険なのではなくて、
無音=生存情報ゼロ、というところが本当の問題だったりします。

だから宇宙の静寂を想像するだけで、
本能的に怖くなる仕組みになっているわけです。

面白いのが、宇宙服の中。

実際の船外活動では、
宇宙服内に通信用のスピーカーや、ファンの動作音、自分の呼吸音が常に響いていると言われています。
完全な無音にしてしまうと、宇宙飛行士の心理的負担が一気に跳ね上がるからだとか(諸説あり)。

つまり宇宙服って、
酸素や圧力だけでなく、「音という生存情報」も供給している装置だったりするんですよね。

ホラー映画で音楽がふっと止まる瞬間。
あれと構造はまったく同じなんです。

何かが起きる前兆として、
「静か」が使われるのは偶然ではなくて、
むしろ脳の警報システムを直接ノックしている演出と言えるわけです。


それでも人は、宇宙に「音」を求める

で、ここからがちょっと面白いところ。

NASAが地球や惑星のデータを音に変換して公開する、いわゆる「ソニフィケーション」と呼ばれる試みがあるんですよね。
電波や磁場のゆらぎを、可聴域の音に置き換える、という作業です。

これを聴いた人の感想がだいたい似ている。

「不思議だけど、落ち着く」
「怖いはずなのに、なぜか安心する」

これ、たぶん偶然じゃないんですよね。

人間の脳は、
音がある=世界が存在している
と感じるように作られているとされています。

だから、

無音の宇宙 + 音に変換されたデータ
=「理解できる世界」

という不思議な等式が成立してしまうわけです。

聴覚というのは、視覚と違って360度を常時カバーしている感覚なので、
「世界に包まれている」実感を生みやすいとも言われています。
だからこそ、音をつけられた宇宙はちょっとだけ「住める場所」に見えてくる、というわけなんですよね。


深海と宇宙が似て聞こえる理由

地球の音や宇宙音を聴いた人がよく言うのが、

「なんか、深海みたい」

これもちゃんと理由があったりします。

深海も宇宙も、

・人間が直接生きられない
・視覚情報が乏しい
・圧倒的に異質な環境

という点でほぼ同じカテゴリ。

だから脳は、
似たような場所として処理してしまう、と言われています。

しかも深海音と宇宙音は、
どちらも低周波成分が多めだったりするんですよね。

低い音というのは、

・大きな存在
・距離のある存在
・制御できない存在

を連想させると言われています。

ライオンのうなり声、嵐の遠雷、地震の前の地鳴り。
人類が長いあいだ「逃げろ」と判断してきた音は、たいてい低い。

要するに低周波というのは、
「自分よりはるかに大きい何かが、すぐそばにいる」
というシグナルとして脳に刻まれているわけです。

それが、怖さとロマンを同時に生む。
宇宙音にしびれてしまう理由は、たぶんこのあたりにあるんですよね。


人間は「翻訳された宇宙」しか理解できない

ここで一度、冷静になっておきたいところ。

普段なにげなく聴いている「地球の音」「宇宙の音」というのは、
あくまで人間の感覚向けに翻訳されたものなんですよね。

本当の宇宙は、

・音もない
・色もない(可視光の外側に大量の情報がある)
・時間感覚も違う(重力場で時間の流れすら変わる)

つまり、

そのままでは人間に理解不能な世界

だからこそ、

音にしたり、色をつけたり、
映像にしたり、グラフにしたりして、
必死に「自分たちが分かる形」に変換し続けているわけです。

これは科学の力でもあり、
同時に、人間の感覚の限界そのものでもあるんですよね。

宇宙を理解しているつもりで、
実は「翻訳された宇宙」しか見ていない、というわけです。


まとめ:静寂が怖いのは、正常な反応

宇宙の無音が怖いと感じるのは、
別に臆病だからじゃないんですよね。

むしろ人間として正しい反応だったりします。

音のない世界というのは、
人類が進化の過程で一度も暮らしたことのない場所。

だから脳は本能的に警戒モードに入る。
これは仕様であって、バグじゃないわけです。

でも同時に、
人はその無音の向こう側を、どうしても知りたがる生き物なんですよね。

音に変え、
物語にし、
映像にし、
なんとか「理解できる形」に翻訳しようとしてしまう。

宇宙は無音。
でも、人間は沈黙に耐えられない。

だから今日も、
人類は宇宙に「音」を与え続けている、というわけです。

……ちょっと小市民的に言わせてもらうと、
日常でも「無言の相手が一番怖い」って、ありますよね(笑)。
返信が来ないLINE、急に黙る上司、無音の会議室。

宇宙の静寂が怖い理由と、
たぶん根っこは同じなんじゃないかな、と思ったりするんですよね。

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