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星がキラキラまたたくのは星のせいじゃなかった件──揺れているのは、たぶん見ている側なんですよね

宇宙・ミステリー

夜道を歩いていて、ふと空を見上げたら星がキラキラしていた。そんな経験、誰にでもありますよね。

で、ぼんやり眺めながら思ったわけです。「星ってなんでキラキラするんだろう?」って。

いや、当たり前に「キラキラするもの」として受け入れていたんですが、よくよく考えると不思議な話なんですよね。星までの距離は何光年というレベル。その距離を越えてきた光が、最後の最後で揺らぐ理由って、一体なんなのか(マジで?)。

調べてみたら、これがなかなか面白い結論に辿り着いたので、今日はそれを共有させてください。

結論から言うと、星は揺れていません

星は揺れていません。正確には「私たちが見ているあのキラキラ」は、星そのものの現象じゃない、ということなんですよね。

星は宇宙空間で、ほぼ一定の光を放ち続けている存在です。恒星の明るさは基本的に安定していて、何億年というスパンで少しずつ変化するとはいえ、人間が肉眼で「キラッ、キラッ」と感じるような短い周期で点滅しているわけではない。

じゃあ、あのまたたきはどこで生まれているのか。

答えは、地球の大気の中、なんです。

犯人は「大気シンチレーション」という現象

大気シンチレーション(atmospheric scintillation)と呼ばれる現象がその正体です。日本語だと「大気のゆらぎ」とか「星のまたたき」って訳されたりします。

仕組みはシンプルで、

  • 地球の大気は、場所によって温度や密度がバラバラ
  • 温度や密度が違う空気は、光の屈折率も違う
  • 星の光が大気に入ると、屈折率の違う空気の層を何枚も通り抜けることになる
  • しかもその空気は、風や対流で常に動いている
  • 結果、光の進む経路がほんの少しずつずれて、地上に届く光の強さが細かく変動する

……という流れ。

要するに、星の光そのものは一定なのに、私たちと星の間にある空気が揺らいでいるせいで、光が揺らいで見えるというわけです。

たとえば夏の暑い日、アスファルトの上で遠くの景色が揺らいで見えることがありますよね。あれと原理は同じ。熱で空気の密度がムラになり、光の経路がグニャグニャに曲がる。あれの超微細版が、夜空で起きていると思ってもらえればOKです。

ちなみに、色が変わって見えるのも同じ理由

よく注意して星を見ると、白いはずの星が青っぽく光ったり、赤っぽく光ったりしますよね。

あれも大気シンチレーションのいたずらで、屈折率が波長(色)によって微妙に違うせいで、色ごとに光の経路が分かれてチラチラするんです。地平線に近い星ほど、光が通る大気の層が斜めに長くなるので、この効果がより強く出るんですよね。冬の夜に低空で赤・青にパチパチ色を変えているシリウスなんかが分かりやすい例です(え、そこまで?)。プリズムみたいな分光が空気全体で起きていると思うと、なんだか壮大ですよね。

惑星は、ほとんどまたたきません

ここで推理好きとしてはニヤッとする話なんですが。

実は、星(恒星)はキラキラまたたくのに、惑星はほとんどまたたかないんですよね。

金星、木星、土星、火星──このへんは夜空で強く光っていても、比較的落ち着いた光に見えます。「あれ、強く光ってるのにあんまり瞬かないな」と感じたら、それは惑星の可能性が高い、と言われるくらいです。

なんでこんな差が出るのか。

点光源 vs 面光源

答えは「見かけの大きさ」にあります。

  • 恒星は、途方もなく遠いので、どれだけ大きな星でも地球から見ると「点」にしか見えない。望遠鏡で拡大しても基本的に点光源です
  • 惑星は、恒星に比べると圧倒的に近いので、望遠鏡で見るとちゃんと「円盤」として見える。肉眼でも実は「ごく小さな面」として見えている

で、ここがミソなんですが、大気のゆらぎは光の経路を細かくずらす現象です。

点光源の場合、そのずれがダイレクトに明るさのゆらぎになる。光源が一点しかないので、ずれた瞬間ごと明るくなったり暗くなったりするわけです。

一方、面光源の場合、面の中の各点がバラバラにずれるんですが、面全体として平均化されるので、ゆらぎが目立ちにくい。個々のゆらぎは打ち消し合って、トータルでは安定した光に見える、というわけなんですよね。

これ、地味にすごい仕組みの話で、「たくさんのブレを平均すると安定する」という話にもつながってきます。夜空の上で平均化が可視化されているというか(凄い)。

天文学者たちは、この「またたき」に本気で困っている

ロマンチックに聞こえる「星のまたたき」ですが、実は天文学の現場では、これがめちゃくちゃ厄介な存在なんです。

だって、せっかく宇宙から届いた光が、最後の数十kmの大気でグニャグニャに歪められちゃうわけで。悲しい。

だからこそ、ハッブル宇宙望遠鏡やジェイムズ・ウェッブは宇宙に行った

大気のゆらぎを避ける一番シンプルな方法は、大気の外に望遠鏡を置くこと

ハッブル宇宙望遠鏡(1990年打ち上げ)もジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(2021年打ち上げ)も、あれだけ巨大なものをわざわざロケットで宇宙に運んだ理由は、まさにこの大気のゆらぎ——それと、大気に吸収されちゃう紫外線や赤外線を観測したい、っていうのもあるんですが——から逃げるためだったりします。

地上の望遠鏡がどれだけ巨大でも、大気というフィルターを通す時点でどうしても画像がボヤける。だったら大気の外に置いてしまえ、という発想。なんとも力技ですが、結果としてとんでもない解像度の宇宙画像が手に入ったわけですから、投資の価値はあったってことですよね。

地上では「補償光学」というテクノロジーで対抗している

とはいえ、地上の望遠鏡にも地上の意地があります。

補償光学(adaptive optics)という技術があって、これがなかなかに知的興奮を誘う仕組みでして。

  • 望遠鏡の視界に「参照光源」となる明るい星(または人工的にレーザーで作った光点)を置く
  • その光が大気でどれだけ歪んでいるかをリアルタイムで測定する
  • そのデータを元に、望遠鏡内部の鏡(可変形鏡)を秒間数百〜千回規模(速いものだと千回超)という速さで微妙に変形させる
  • 大気の歪みと逆の歪みを鏡で作り出して、ゆらぎを打ち消す

つまり、「大気が揺れるなら、こっちも揺らして相殺してやる」という、対症療法の極みみたいなテクノロジー。イメージとしては、揺れる船の上でコップを水平に保とうとするスタビライザーみたいなもの。船の傾きを読み取って、逆方向にグッとコップ側を動かして、中の水面を一定に保つ。あれの光学バージョンが、望遠鏡の中で超高速に行われている感じです。

この技術のおかげで、現代の地上望遠鏡は条件次第でハッブル並みの解像度を出せるようになっています。凄いですよね、人類の執念。

まとめ──揺れているのは、たぶん自分のフィルター

で、ここからは余談というか、調べていて思ったことなんですが。

「星は揺れていない。揺れているのは、それを見ている側の空気だ」

この事実を知ったとき、なんだか妙に考え込んじゃったんですよね。

というのも、つい先日、職場の同僚に対して「この人、言ってることが日替わりでブレてないか?」と一瞬イラッとした瞬間があって。で、家に帰って冷静になってみたら、単にこっちが残業続きでフラフラだっただけだった、という(笑)。相手の光は、たぶん一定だったんです。

補償光学みたいに、リアルタイムで自分の歪みを測って打ち消す装置が人間にも搭載されていればいいんですが、残念ながらそんな便利なものはついていません。せめて大事な判断をするときくらいは、心を凪(なぎ)の状態に近づける努力をしたいなあ、と思ったりするわけで。

——なんて、星を見ながら余計なことまで考えちゃうのが小市民なんですけどね(笑)。

まあ、難しいことは抜きに、単純に「星のキラキラが実は大気のせいだった」という雑学として覚えてもらうだけでも、今夜空を見上げたときにちょっと楽しくなると思います。

次に夜空を見上げる機会があったら、ぜひ強く光っている星を探してみてください。キラキラと瞬いていたら「今、地球の空気が揺れてるな」、ほぼ瞬かずにどっしり光っていたら「あ、これ惑星かも」と、推理してみると楽しいですよ。

宇宙の端から届いた光を通して、足元の空気の状態を読む。ちょっとした探偵気分を味わえる、コスパのいい趣味だったりします(笑)。





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