子どもの頃、図鑑で火星を見て「赤くて乾いた、寂しい星だなぁ」と思っていたんですよね。砂漠だらけで、生命の気配ゼロ。地球のお隣さんなのに、なんでこんなに違うんだろう、と。
ところが大人になって調べてみると、火星はかつて、地球のように青かったらしいんです。広大な海があって、川が流れていて、もしかしたら生命だっていたかもしれない。
え、マジで? じゃあ、その水はどこに消えたの?
調べていくうちに、原因のひとつが「重力が足りなかったから」だと知って、なんだか胸の奥がざわっとしました。豊かさを保つには、それを繋ぎ止める「器」が必要なんだ、と。これって、星だけの話じゃないですよね(←これ重要)。
かつて火星は「青かった」かもしれない

NASAやESA(欧州宇宙機関)の探査機が長年送ってくる画像や観測データを見ると、火星の表面にはどう考えても「水が流れた跡」としか思えない地形がたくさんあるんですよね。
干上がった川のような蛇行する谷、扇状地、湖の底だったとされる堆積層、丸く磨かれた小石(探査車キュリオシティが見つけたやつ)。地球の地理学者が見たら「これは河川堆積物ですね」と即答するような特徴が、火星のあちこちに残っているわけです。
研究者の試算では、約30〜40億年前の火星には、北半球を覆うほどの巨大な海、いわゆる「ボレアリス海」のようなものが広がっていた可能性が指摘されているんですよね(諸説あります、ここは要注意)。海の深さも数百メートルレベル、量にすれば現在の北極海くらいはあったかもしれない、と言われています。
つまり、ご近所の星にもかつては波が打ち寄せていた、と。地球の海岸でぼーっと水平線を眺めるあの感じが、火星にもあったかもしれないわけです。なんかロマンありますよね(笑)。
でも今は、ほぼ干からびている
ところが現在の火星はどうかというと、表面に液体の水はほぼ存在しない。地下や極冠に氷の形でちょっと残っている、夏場に塩水がしみ出しているっぽい痕跡もある(これも議論中)。それくらいです。
大気もスカスカで、地表気圧は地球の約1%以下(おおよそ170分の1くらい)。100分の1どころか、それよりさらに薄いんですよね。仮に液体の水を地表に置いても、低圧と低温ですぐに蒸発するか凍るかしてしまう。要は、水が「液体でいられない環境」に成り下がってしまったわけです。
これって、お風呂のお湯が冷めるのを通り越して、お湯そのものが気体になって天井に消えていくような世界、と言ったら近いかもしれません(マジで?)。
何が起きたのか。犯人はいくつかいるんですが、なかでもじわじわと効いてきた最大級の要因が、「重力」だったりします。
重力が弱いと、大気は宇宙に逃げていく

ここで物理の話を少しだけ(笑)。学生時代に物理をかじっていた身として、ここはちゃんと説明したいところなんですよね。
火星の質量は地球の約11%、半径は約半分。表面重力は地球の約38%程度と言われています。「3分の1ちょい」と覚えておくと、感覚的にわかりやすいかもしれません。
重力って、要するに「物を引きつけておく力」なんですけど、これは大気にも効いているんですよね。地球の大気が宇宙に逃げ出さずに地表近くに留まっているのは、地球の重力が大気の分子を引きつけているから。
イメージとしては、口を縛った風船の空気がだんだん抜けていくあの感じ、と言ったら近いかもしれません。風船のゴムが薄くて弱いほど、空気は早く抜けていきますよね。火星はちょうど、そのゴムが薄い風船みたいなものだったわけです。
一方、大気の分子は熱で動き回っていて、温度が高いほど速く飛び回ります。この速度が、その星の「脱出速度」を超えてしまうと、分子は宇宙へ飛んでいってしまう。これが大気散逸(atmospheric escape)と呼ばれる現象で、いくつかメカニズムが知られています。
火星の場合、重力が弱いので脱出速度も低い(地球の約45%程度)。つまり、軽い分子はもちろん、ある程度重い分子まで、長い時間をかけて宇宙へ少しずつ漏れていってしまうんですよね。
磁場がなくなったのも痛かった
しかも火星には、もうひとつ追い打ちがあったんです。
地球には地磁気というバリアがあって、太陽から飛んでくる荷電粒子(太陽風)から大気を守ってくれているんですよね。ところが火星は、約40億年前に内部のダイナモが停止したと考えられていて、全球的な磁場を失ってしまった。
NASAのMAVEN探査機の観測で、現在の火星でも太陽風によって大気が剥ぎ取られていく現象がリアルタイムで確認されているらしいんです。地磁気というシールドを失った状態で、弱い重力という頼りない壁だけで、太陽風の前に立たされている。これでは大気が削られていく一方だよなぁ、と。
水蒸気も、紫外線で分解された水素が宇宙に逃げ、酸素も少しずつ持っていかれる。億年単位の時間をかけて、火星はじわじわと「干からびていった」わけですね。
つまり「器」がないと、豊かさは消える

火星の悲劇って、こういう構造だったりします。
- 一度は水も大気も豊かに揃っていた
- でもそれを引きつけておく重力が弱かった
- 守ってくれる磁場まで失った
- 結果、長い時間をかけて宇宙に少しずつ持っていかれた
結局のところ。
つまり、「持っていたかどうか」より、「持ち続けられる器があったかどうか」の差だったわけです。
これ、聞いてて自分のことのように胸が痛くなりませんか(笑)。
たとえば、若い頃にせっかく身につけたスキル。使わないでいると、いつの間にか錆びついて、思い出そうとしても出てこない。せっかく稼いだお金。家計管理という「器」がないと、なぜか月末には消えている(マジで?)。せっかく築いた人間関係。連絡を取り続ける習慣がないと、気づけば疎遠になっている。
豊かさは「手に入れた瞬間」がゴールではなくて、そこからが本番だったりするんですよね。
「自分なりの重力」を鍛えるとは

じゃあ、自分にとっての「重力」って何なのか。少し考えてみたんですよね。
恥ずかしい話、学生時代にあれだけ叩き込んだ物理の数式、いま白紙の紙に書けと言われたら半分も出てこないんですよ(笑)。当時はテスト前に夜中まで解いていたのに、使わない年月が10年も続けば、知識ってこんなにスカスカになるのか、と。まさに大気散逸ですよね、頭の中の。
ひとつは、習慣。毎日の小さな積み重ねは、地味ですが間違いなく「引きつけ力」になっています。読書を続けていれば思考が逃げない、運動を続けていれば体力が逃げない、家族との時間を確保していれば関係性が逃げない。
うちの場合はですね、結婚した直後に「家計簿アプリを毎月ちゃんと見よう」と意気込んで始めたものの、3か月で見なくなり、半年後には「今月いくら使ったっけ?」と二人で顔を見合わせるという(マジで?)。ザルで水をすくっていたみたいな状態でした。仕組みも習慣もない、ただの良い決意だったんですよね。
もうひとつは、仕組み。意志の力に頼らず、自動的に維持される構造を作っておくこと。たとえば家計なら自動積立、健康なら定期健診、知識なら定期的にアウトプットする場を持つ。火星に磁場というシステムがあれば結果が違ったかもしれないように、人生にも「逃がさない仕組み」が要るんですよね。
そして最後は、メンテナンス意識。完成して終わりではなく、ずっと手入れをし続ける覚悟。地球が今も水と大気を保っているのは、たまたま運が良かったからではなく、地球規模の循環システムが今この瞬間も働き続けているからだったりします。
豊かさを「点」で見るんじゃなくて、「動き続ける流れ」として見る。そのうえで、流れが止まらないように器を整える。これが「自分なりの重力」を鍛える、ということなのかな、と。
まとめ

火星にかつて海があった、という話から、思いのほか深いところまで連れていかれた感じがします(笑)。
科学的にきちんと押さえておきたいのは、
- 火星に液体の水が広く存在した時代があったと「考えられている」(地形的・鉱物的証拠から推定、諸説あり)
- 大気が失われた要因のひとつが、弱い重力による大気散逸と、磁場喪失による太陽風の影響(複合要因)
- これは数十億年単位の超ゆっくりした現象
ただ、ロマンとして受け取りたいのは、「豊かさを守る器の大切さ」なんですよね。
才能、健康、お金、家族、信頼。どれも手に入れたときには光り輝いていても、それを引きつけておく自分自身の「重力」がなければ、いつの間にか宇宙の彼方へ漏れていってしまう。
今日もコツコツと、自分の重力を鍛えていきたいなぁ、と火星を見上げて思ったわけです。みなさんも、夜空に赤い星が見えたら、ちょっとだけ「自分の器」のこと、考えてみてもいいかもしれません。
宇宙の不思議をもう少し深掘りしたい方は、こちらの一冊が「物理学の発想」から宇宙を語っていてオススメです。
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