机の上に、シャープペンシルがあります。
たぶん、誰の家にも一本くらいある。
学生時代から使ってきた人も多いはずです。
カチカチ押す。芯が出る。書く。折れる。ちょっとイラッとする。またカチカチする。
そんな身近な道具なのに、ふと思いました。
シャープペンシルの「シャープ」って、何がシャープなんですか。
芯が鋭いから?
家電メーカーのシャープと関係ある?
そもそも海外でもシャープペンシルって言うの?
結論から言うと、「鋭い」という意味と、商品名としてのSharpが重なって、日本で定着した名前です。
つまり、ただの文房具名ではなく、発明と商売と日本語の定着が混ざった名前なんです。
海外では「シャープペンシル」とはあまり言わない
まず意外なのがここです。
シャープペンシルは、かなり日本語っぽい呼び方です。
英語圏では、一般に mechanical pencil と呼ばれます。
直訳すると、機械式鉛筆。
かなり説明的です。
芯を削らず、内部の仕組みで芯を出す鉛筆。だから mechanical pencil。
日本語の「シャープペンシル」は、機能説明というより商品名やイメージに近い。
鋭い。
細い。
きれいに書ける。
なんだか仕事ができそう。
名前の時点で、ちょっとキャッチコピーなんですよね。

早川徳次と「エバー・レディ・シャープ・ペンシル」
シャープペンシルの歴史でよく出てくるのが、早川徳次です。
のちにシャープ株式会社へつながる人物として知られています。
早川徳次は、金属製で丈夫な繰り出し式鉛筆を改良し、「エバー・レディ・シャープ・ペンシル」と名づけました。
Ever Ready。
いつでも準備OK。
Sharp Pencil。
いつでも鋭く書ける鉛筆。
この名前、かなりうまいです。
鉛筆の弱点は、削らないと先が丸くなること。
削るには手間がかかること。
その面倒を、芯を繰り出す仕組みで減らした。
つまり、シャープペンシルの「シャープ」は、単に尖っているという意味だけではありません。
いつでもすぐ書ける状態に保つという価値を表していたわけです。
小市民としては、ここにぐっと来ます。
削る手間を減らす。
ムダを減らす。
すぐ使える。
完全に効率化の話です。
商品名が、道具の名前になった
面白いのは、その後です。
商品名だったはずの「シャープペンシル」が、日本では道具そのものの名前として広がっていきました。
こういうことは、生活の中でよく起きます。
商品名やブランド名が、いつの間にか一般名詞みたいに使われる。
便利で、短くて、みんなが同じ意味で使える名前は強い。
「機械式鉛筆」と言われるより、「シャーペン」の方が圧倒的に早いです。
この短さ、日常では正義です。
そして日本人、略すのがうまい。
シャープペンシル。
シャーペン。
もう戻れません。
芯に鉛は入っていない
ついでに、鉛筆まわりの誤解も整理しておきます。
鉛筆の芯に、鉛は入っていません。
主な材料は黒鉛です。
黒鉛は炭素の仲間です。
「鉛筆」という名前のせいで、鉛が入っているように見えますが、実際には違います。
名前というのは、便利だけど、ときどき誤解も連れてきます。
シャープペンシルも同じです。
英語っぽいけど、日本で定着した名前。
鋭いという意味もあり、商品名の歴史もある。
一本の文房具に、けっこうな情報量が詰まっています。

なぜ今でも使われるのか
シャープペンシルが長く使われている理由は、単純です。
便利だからです。
削らなくていい。
線の太さが安定しやすい。
消しゴムで消せる。
芯を替えれば長く使える。
ボールペンやタブレットがある時代でも、シャープペンシルには独特の立ち位置があります。
考えながら書く。
間違えたら消す。
また書く。
この「仮置きできる感じ」が、思考と相性がいいんですよね。
いきなり清書ではなく、まず下書き。
小市民の人生もだいたい下書きです。
まとめ
シャープペンシルの「シャープ」は、芯が鋭いという意味だけではありません。
削らなくても、いつでも書ける。
細く、きれいに、すぐ使える。
その価値を名前にしたものです。
さらに、早川徳次の「エバー・レディ・シャープ・ペンシル」という商品名が広がり、日本では道具そのものの呼び名として定着していきました。
海外では mechanical pencil。
日本ではシャープペンシル。
そして日常ではシャーペン。
名前が短くなっても、そこには発明と改良の物語が残っています。
次にシャーペンをカチッと押すとき、少しだけ思い出してください。
その小さな音は、「削る手間をなくしたい」という人間の面倒くさがりと工夫の音です。
悪くない音です。
あなたは、どんな「小市民」ですか
大それた野望はないけど、自分なりのこだわりはある。そういう生き方にもいくつかタイプがあるみたいで、自分の輪郭をちょっと確かめてみたくなります。


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