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日本の「天下り」—悪のイメージしかないけど、なぜ生まれたのか

政治・経済

「天下り」って聞くと、だいたい悪役みたいな顔で語られるよね。ズルい、癒着、税金の無駄、みたいな。

…うん、分かる。キョウも最初はそう思ってた。というか、いまでも「臭いものにはフタ」的な本能はある。小市民だから。

でもね、天下りって、ただの“悪人の趣味”として片づけると、逆に社会のバグを見逃すんだ。バグってのは「仕様の穴」であって、「悪人だけを消したら直る」タイプじゃないことが多い。

この記事では、天下りを「善悪のラベル」から一回はがして、

  • そもそも何が天下りなのか
  • なぜ生まれ、どんな問題を解こうとしていたのか
  • どこから腐りやすくなるのか(ここ大事)
  • いまのルールはどうなっているのか
  • じゃあ、どう考えるのが現実的なのか

…を、小市民目線で一緒に整理していく。

まず、「天下り」って何を指してるの?(ここで迷子になる)

世間で言う「天下り」はだいたい、官僚(国家公務員)が退職後に、民間企業や団体(外郭団体・公益法人・独法・特殊法人など)へ再就職することを指してる。

ただ、ここで重要なのは、“再就職”そのものと、“再就職のあっせん(口利き・組織的な紹介)”は別物ってこと。

たとえば、転職そのものは人間の普通の権利だよね。公務員だけ「退職後は無職でいろ」って言うのはムチャがある。問題になりやすいのは、

  • 現職時代の権限や情報を、将来の席(ポスト)と交換する
  • 組織ぐるみで“退職後の受け皿”を作って回す
  • 退職後に“元の役所へ”影響力を行使する(働きかけ)

このへんが絡んだ瞬間に、世間が言う「うわ、天下りだ…」が発生しやすい。

なぜそんな仕組みが必要だったのか(善玉の顔をして出てくる)

ここ、いちばん誤解されるポイントなんだけど、「天下り」って最初から“汚職装置”として設計されたわけじゃない。少なくとも建前は。

理由1:ピラミッド組織の“出口”問題

官僚組織は基本ピラミッド。上に行くほど椅子が減る。つまり、優秀でも全員が頂上に行けない。

じゃあどうなるか。上が詰まると、組織が回らない。だから、一定の年次で「そろそろ…」と退く人が出る(いわゆる早期退職の慣行)。

で、ここで現実問題が出る。

「退職後どうやって生活するの?」

民間みたいに転職市場が成熟していない時代ならなおさら。そこで「受け皿」が必要になった。これが“制度の光側の言い分”。

理由2:国で積んだ知識を民間に渡す(ナレッジ移転)

これも建前としては筋が通ってる。

行政って、独特の言語で動くんだよね。法律の読み解き、予算、許認可、調達(入札)、監督、リスク対応。こういう“行政の文法”を知ってる人が民間に行くと、官民のやり取りがスムーズになる。

インフラ、金融、医療、エネルギーみたいな規制産業では特にそう。現場は「役所の言い回しを翻訳できる人」を欲しがる。

つまり、天下りには「国で育った知識を社会に還元する」という顔もあった。包丁みたいにね。料理にも使える。





でも、なぜ“腐敗の温床”になりやすいのか(ここからが本題)

包丁は料理にも使える。でも、危ないのは「包丁が悪い」じゃなくて、包丁を“悪用できる設計”が残っていることなんだよ。

天下りが腐りやすい理由は、ざっくり言うとこの三段コンボ。

  1. 現職の権限(許認可・補助金・行政指導・調達・監督)
  2. 将来の見返り(ポスト・報酬・顧問料・天下り先の確保)
  3. 検証しづらさ(「たまたま」「適材適所」「正当な採用」で逃げられる)

この3つが揃うと、「賄賂」みたいに分かりやすく現金が飛び交わなくても、実質は“交換”が成立しうる。

しかもタチが悪いのは、当事者がみんな「違法じゃないですよ?」って顔をしやすいところ。ルールのすき間で動くから。

有名な炎上ワード:「ワタリ」

天下り批判でよく出るのが「ワタリ」。退職後に複数の団体を短期間で渡り歩き、その都度退職金などを得る、と批判されてきたやつ。

これ、一般の感覚でいうと「何回も退職金もらえるゲームの裏技」みたいに見える。そりゃ怒る。

ただし、ここでも“感情”だけで終わらせると、次の問いが残る。

「なぜそんな裏技が成立する設計だったの?」

答えはだいたい同じで、「出口を用意しないと組織が回らない」「でも出口を作ると悪用される」。このジレンマ。





いまの日本は、天下りをどう縛っているの?(現行ルールの骨格)

ここは安心してほしい。日本は「天下りって言葉が出たら放置」ではなく、ルールを積み上げている。

ポイントは、「再就職の全部禁止」じゃなくて、利益相反(conflict of interest:立場がぶつかって判断が歪む状態)を起こしやすい行為をピンポイントで縛る方向に寄ってること。

縛り方は大きく3つ

縛る対象狙いざっくり何がダメ?
現職の職員在職中の利益誘導を防ぐ利害関係が強い相手に、転職活動や根回しをする
府省の職員(紹介する側)組織ぐるみのあっせんを防ぐ役所が企業に「この人どう?」と斡旋する
退職した元職員“元の職場”への働きかけを防ぐ退職後に古巣へ「契約よろしく」的な働きかけをする

つまり、「転職」そのものより、転職をめぐる“影響力の持ち込み”を問題視している感じ。

監視する仕組みもある

内閣府には再就職等を監視する第三者機関が置かれていて、違反情報の受付などもやっている。

そして、一定の範囲の管理職だった人が退職後に再就職した場合など、再就職情報の届出・公表の仕組みもある。数字も出る。こういう“見える化”は、地味だけど効く。

ただし、ここで小市民的に一言。

ルールがある=完全に防げる、ではない。

ルールは「悪用を難しくする」ことはできる。でも「悪用の可能性をゼロ」にするのは、だいたい無理。だから設計の話になる。




包丁は“徳”だけに任せちゃダメ(ゼロトラストの発想)

あなたの視点、すごく分かる。「制度自体より、それが特権維持に使われたことが問題」ってやつ。

でもね、ここで現代っぽい(そして悲しい)結論がある。

システムは、使い手の徳を前提に設計しない方がいい。

これは性善説・性悪説の話じゃなくて、セキュリティの話に近い。最近よく聞く「ゼロトラスト」ってあるでしょ。誰も完全には信用しない前提で守るやつ。

天下りも同じ。善人が運用すれば知識還元になる。でも、悪人(もしくは“空気に負ける普通の人”)が運用すると、癒着装置になる。

だから重要なのは、道徳説教よりも、

  • 透明性(見える化)
  • 冷却期間(クーリングオフ…じゃなくてクーリングオフ期間、要するに距離を置く期間)
  • 利益相反の管理(関与禁止・記録・第三者レビュー)
  • 人事制度そのもの(早期退職の圧、給与、キャリアの多様化)

こういう「悪用コストを上げる仕組み」を増やすこと。




「天下り=全部悪」で終わらせると、別の地獄が出る

ここ、ちょっと嫌な話をする。

天下りを力ずくでゼロにしようとしても、問題が消えるとは限らない。形が変わるだけのことが多い。

たとえば、

  • 元官僚が「顧問」「アドバイザー」「コンサル」という名前で入る
  • 組織的あっせんが減っても、個別のリクルート(一本釣り)が増える
  • 官側の知見が不足して、外部委託(コンサル依存)が膨らむ

…みたいな方向にズレることがある。

もちろん「だから天下りOK」とはならない。でも、「禁止すれば安心」って単純化も危険。

結局、ぼくらが欲しいのは、

知識の移転は起こる。でも利益相反は起こりにくい。

という、ちょっとわがままな世界なんだよね。わがままだけど、それを目指すのが政治と行政の仕事でもある。




小市民のための“現実的チェックリスト”

「じゃあ一般人は何を見ればいいの?」って話。ぼくもここが知りたい。

小市民ができるのは、せいぜいこのへん。

  • 再就職情報の公表:どの省庁からどの分野へ、どれくらい動いているかを見る
  • 調達・補助金・許認可の透明性:手続きや審査が記録されているか(ブラックボックスだと疑念が育つ)
  • 「説明の型」を見る:「適材適所です」だけで終わってないか。根拠があるか
  • やたら“偶然”が重なる案件に注意:偶然は起こる。でも連打すると、さすがにね

そして最大のポイントはこれ。

叩きやすい悪役を叩いて終わらず、設計を問い続ける。

悪人を叩くのは気持ちいい。でも、悪人がいなくなっても、穴(仕様)が残ってると、別の誰かが同じ穴を使う。

社会って、そういう地味なホラーでできてる。



結局、「天下り」は何だったのか

ぼくなりに今日の結論を言うと、天下りはこういう存在だと思う。

  • 国が育てた知識を民間へ流す「橋」になり得る
  • でも、利益相反が起きると「裏口」になり得る
  • だから必要なのは、善悪の断罪より「裏口になりにくい設計」

包丁は、料理にも武器にもなる。

だったらぼくらは「包丁を捨てる」か、「安全に使える台所を作る」かを選ばなきゃいけない。

…で、小市民のぼくは、できれば後者がいい。料理したいし。刺されたくないし。




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